理事長あいさつ

血液と免疫の架け橋

香川大学医学部 血液・免疫・呼吸器内科学
門脇 則光

日本血液疾患免疫療法学会(JSIHD)の第4代理事長に就任しました門脇です。

本学会は、遡ること2005年、血液領域で注目されていなかった免疫療法のポジションを引き上げ、若手に魅力的な領域にするために「血液腫瘍免疫療法フォーラム」として立ち上げられました。その後の胎動期を経てこの領域は急速に発展し、今や多くの血液内科医が注目する分野になりました。キメラ抗原受容体遺伝子導入T細胞療法(CAR-T細胞療法)が2019年に保険収載されるやいなや、B細胞腫瘍に対する救世主的治療として急速に広まっています。さらに、体内のT細胞を利用する二重特異性抗体療法もラインナップに加わり、対象患者さんが拡大しています。一方、固形がんに対する免疫療法の主役である免疫チェックポイント阻害薬は、造血器腫瘍に対してはHodgkinリンパ腫だけが適応になっており、今後のポジショニングが模索されています。

このように、造血器腫瘍では固形がんとやや異なる色彩で免疫療法が進展しており、CAR-T細胞や二重特異性抗体の顕著な効果を固形がんに対して再現するストラテジーが探索されています。その意味で、造血器腫瘍に対する免疫療法は固形がんに対するそれを先導しており、がん免疫療法の最先端を走っているといえます。

さらに遡れば、広く行われている同種造血幹細胞移植が本質的には細胞免疫療法であり、CAR-T細胞療法がその流れと軌を一にすることから、造血器腫瘍に対する免疫療法はひとつの統一した枠組みを形成しています。また、非腫瘍性疾患でも免疫学的機序が病態の主体となる再生不良性貧血、自己免疫性溶血性貧血、免疫性血小板減少症などがあり、血液疾患と免疫療法は広汎かつ密接な関係があります。

以上のような背景のもと、日本血液疾患免疫療法学会は、さまざまな血液疾患を対象として、免疫の観点から病態や治療を深く議論する学会です。この領域が今後ますます発展することが見込まれる中、多くの研究者・臨床医が本学会のもとに集まることを期待しています。

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